胃の中は、とても強い酸性なので菌は短時間しか生きられないのではないかと長い間考えられてきましたが、1980年代に酸の影響が及ばない粘液の下に細菌が生息していることが明らかになりました。
形がヘリコプターに似ていることから、ヘリコバクター・ピロリ菌と名づけられました。この菌は、胃を荒らし、慢性胃炎となり、潰瘍をできやすくすることが解明されています。さらに、その一部が胃がんの原因になることが分かっています。日本人の4割に感染しているとも言われています。
現在、3種類のお薬を1週間飲むことによってこの菌を無くする治療が既に開発されており、難治性や再発性の胃潰瘍に効果をあげています。
除菌治療は平成12年11月1日より、ヘリコバクター・ピロリ菌陽性で胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の方には保険適用となりました。
また、平成25年2月21日より、内視鏡検査において胃炎の確定診断がされた方にも保険適用となりました。
その他の方には自費での除菌治療を行っています。
なお、当院では、カメラを含む検査用具は全て殺菌、洗浄しております。
唐沢病院では ①上部、下部②消化管③内視鏡の専門病院として、胃癌、大腸がんで死亡する人を一人でも少なくすることが目標です。
そのために「いかに楽に検査ができるか」ということを重要視し、最新のカメラ機材を用意しております。
胃の検査を楽に受けるのに一番大切なのは医師の技術です。同時に患者さんと医師の信頼関係も重要です。
それでも100人に5人ほどは大変咽頭が大変敏感な方がおります。その場合や、精神の緊張感や恐怖感の強い方には、ごく少量の鎮痛剤を投与すると、とても楽に検査を受けることができます。
当院では、朝ご飯を食べないで来院された方はその日に胃カメラ検査を受けることができその方の応じた麻酔をしています。
アニサキスはイルカやトドに憑く寄生虫のひとつです。海中に放出された虫の卵をオキアミが食べ、中間宿主であるサケ、イクラ、イカ、サバ、マグロが食べます。
それを最終宿主であるイルカやトドではなく、人間が食べ、虫に胃壁や腸壁などを刺され腹痛や下痢等を起こします。
アニサキスは1969年2月10日に旭川で初めて当院で摘出しております。また、アニサキスよりも太くて長いテラノーバを1970年6月25日に世界で初めて当院で発見しております。
胃アニサキスの場合、中間宿主の刺身等を摂取後 胃袋の胃壁に穴をあけ、激しい痛みを引き起こします。初めての感染では、幼虫は消化管壁に頭を突っ込みますが、この時はほとんど痛みも無い軽症で終わります。
しかし、過去にアニサキスの幼虫の侵襲を受けていると、体内に幼虫の成分に対する抗体ができており、体が過敏反応を起こします。これは激しい腹痛を起こすことがあります。
この場合、医師の診断をうけ、内視鏡による虫の摘出が必要となります。
腸アニサキスの場合、食後数時間~数日後に腹痛や吐き気や腸閉塞の症状が出現します。
摘出は不可能ですので、症状を緩和/軽減する対症療法を行います。
主に魚を刺身で摂取することによる感染が原因となりますが、零下20℃以下で4時間以上冷凍することにより防ぐことが可能ですから、冷凍ものの刺身は安全といえるでしょう。
また、加熱処理も有効なので焼き魚も安全です。
右のグラフは、当院で治療されたアニサキス感染患者に対する問診から得た起因魚介類の数です。
サケ、イクラ、イカ、マグロなどがよく原因になることが分かります。
白い糸状で長さ2,3センチの幼虫が魚の内臓に大量にいたら要注意です。生食は控えたほうが良いでしょう。
当院では昭和40年代からアニサキスの摘出術・研究を行っております。
▲原因となった魚介類の統計